株式会社イエローハット相談役
鍵山秀三郎
杉井保之氏が上梓された本書は、人生の難題と向かい合っている人にとって、”戦場に勇者来る”の思いがする福音書です。
家庭や職場、人が関わり合うところにはいつも問題が生じ、時と共に深刻化して人々の心を悩ませてきました。有史以前から続いて来たこの課題に対して、今までは誰に相談しても期待した答えを得られないまま今日に至りました。難題を抱えた多くの人が、心強い味方の解決の道を求めて問題提起してきたにも関わらず、教え導く人が、無関心な傍観者に過ぎなかったり単なる激励者でしかありませんでした。
たとえ答えが示されても具体性に乏しく「あなたの我慢と工夫と努力で」といった抽象論で幕が下ろされて終わるのが常でした。
お酒を求める人に、酒の原材料である水と米を届けたとしても期待に応えたことにはなりません。
ところが現実社会では、そのような対応でよしとする状況がいつでもどこでも起きているのが現状です。
著者の杉井保之氏は、この度、水と米を醸造するすぐれた杜氏として登場し、豊富な体験という麹をもって、見事な大吟醸酒を作り、お酒を求める人々の期待に応えました。
本書は、そんな杉井保之氏の生活体験から生み出された実践の書です。
多くの人々の悩みを自らの課題として受け止めた人のみが灯すことのできる一大光明でありましょう。
これまで繰り返されてきた曖昧な悪循環を断ち、確答という朗報をもたらした良書です。ともすれば暗くなりがちな人の悩みを本書が明るく朗らかに解決することをお約束します。
このところ、私の周りでも経営が厳しいという話がずいぶん聞こえてきました。
景気が冷え込み、デフレが進む中、本当に厳しい年末を迎えている方もたくさんいることと思います。
私も「来年はどうなるか?」と考えると不安でたまりません。
そんな時、私に勇気を与えてくれた本がありましたので、皆さんにもご紹介したいと思います。
その本は、「ほんの少しの間、目を閉じて、地球上で最も過酷な場所を思い浮かべてほしい」という文章から始まります。
それは北極でも、赤道直下の砂漠でもなく、地球上で最も過酷な場所はどこでしょう?
「南極」です。
イギリスの威信をかけ、地球上で最も過酷な場所「南極横断」に向かいながら、目的地である南極大陸にさえ到達出来ないまま遭難した「シャクルトン隊」の栄光ある失敗の記録が『そして奇跡は起こった―』(評論社) です。
過酷な氷の世界で船を失い、一年以上もの間、氷の上をさまよいながら乗組員二十八名、一人も欠けることなく、全員が生還したこの事実は、極限状態での「リーダーのあり方」や「生き残る組織の条件」を表していて、真冬の荒波の中、必死に蛇を取っている多くの経営者(リーダー) に、大きな示峻と勇気を与える一冊だと思います。
私は、不況期を乗り越える最大のポイントは、「リーダー・シップ」と、みんなが思いを一つにする「明確な目的(理念)だと思っています。
それがあるから我慢も出来、無理も利くと思っていますが、シャクルトン隊も、そうであったようです。
南極に出発する前、シャクルトンについて質問されたある隊員は、「あの人は立派な人だ。部下を危険な目に遭わせるせるようなことは出来る限り避ける。しかし、どうしても避けられない危険がある時には、賭けてもいいが、あの人は先頭に立っても向かっていく人だ」と語っています。
実際に彼は数人の部下と小さなボートで、荒れ狂う南氷洋を1300キロも渡り、海抜1200メートル以上もある氷のアルプスを歩いて越えたのですが、それが出来た理由をシャクルトンは次のように述べています。
「疲れ果て、空腹で雪の中を歩いていると、眠ることさえ出来れば何もいらないという気持ちになるものだ。
それでも我々を前へ前へと突き動かしてくれたものは、『どうしても仲間を救いたい』といぅ焼け付くような思いだった。
もし自分だけのことを気にかけていたら、きっと結果は違っていただろう。
私は隊長であり、私を信頼して待っている仲間がいる。
彼らを思うと、どれほど苦しくても前へ進まなくてはいけなかった」
こうした思いを持ったリーダーにとって、隊員を迎えに行った時に隊員から送られた「ボス、あなたならきっと戻ってきてくれると信じていました」という言葉は、何にも勝る賛辞だったことでしょう。
前途に希望が見えにくい日々の中にあっても、「あきらめるな!」「生きのびろ!」というこの本のメッセージは、きっと多くの人に大きな勇気を与えてくれることでしょう。
私も不安で目的地が見えなくなることがよくありますが、どんな時も目的を確認して歩いていきたいと思っています。
結果は分かりませんが、私には守りたい人たちがいて、私はリーダーです。
最後の最後まであきらめずに工夫し、誠実な努力をし続けることが、その人たちに対する私の誠意だと思うのです。
今の時代は、経営者に限らず、歩く意味を見失って苦しんでいる人が多いと思います。
しかし、多くの場合、努力が辛いのではなく、夢がないのが辛いのです。
そんな時は、大切なものを確認し、仲間と夢を語り合って歩き続けましょう!
彼らの乗った船の名は、「エンデュアランス(不届の忍耐)号」という名前でした。
経営者セミナーなら オリジン・コーポレーション
20年間増収増益、無借金経営を実現させた杉井保之が
選ばれる企業や繁栄を続ける経営のコツを、分かりやすく
そして、ユーモアも交えながら、ご指導いたします。
幸せな人生を残す「複写はがきの控え」も販売しております。